|
A:「なぁ」 B:「おい、早く行こうぜ」 A:「なぁ」 B:「馬鹿。でけー声だすなって …なんだよ」 A:「これ、何」 B:「は?」 A:「これ」 B:「さぁ。わかんねーな」 A:「変な形」 B:「タイトル書いてあんだろ。どっかに」 A:「暗くてよく見えねぇな」 B:「いいから早く案内しろよ 俺、場所わかんねんだからよ」 A:「太陽を見上げる少女だって」 B:「あぁ、そう」 A:「お前、これ、そう見える? こーゆーのが芸術なのかねぇ」 B:「だからわかんねーよ、俺は お前の方わかんだろ」 A:「見えねぇよなぁ だって、こんなん、玉に針金が絡んでるだけじゃん 大体さ…」 B:「おい、いい加減にしろよ」 A:「でけー声出すな馬鹿 なに考えてんだ」 B:「あぁ…ごめん。…えぇー」 A:「こっち」 B:「しかし、気味悪いよなぁ 夜の美術館って」 A:「そうか?」 B:「ほら、絵とか銅像とかさ なんか動き出しそうな感じすんじゃん」 A:「動くわけねーだろ」 B:「でも、ほら ガキの頃、音楽室の肖像画の目が動くとかさ あったじゃん」 A:「だから、動くわけねーだろ」 B:「いや…」 A:「馬鹿か」 B:「…」 A:「ああ、ここだ」 B:「結構でかいな。実物大?」 A:「だな」 B:「運べるか」 A:「大丈夫」 B:「でも、銅で出来てんだろ?」 A:「こーゆーのは大体中が空洞になってんだよ これなら四〇sってとこか」 B:「流石だな」 A:「ちゃんと調べて来てんだよ」 B:「俺、こーゆーのわかんねーから お前に任せたけどさ やっぱこれが高いわけ」 A:「うん。てゆーか似てんじゃん」 B:「何が」 A:「顔が」 B:「誰に」 A:「お前に」 B:「似てる?」 A:「似てる」 B:「そうかな」 A:「じゃあ、これ」 B:「何これ」 A:「何って、絵の具」 B:「いや、そりゃ見りゃわかるけど」 A:「塗って」 B:「どこに」 A:「お前に」 B:「なんで」 A:「だから、身代わりになんだろ お前が」 B:「なんの」 A:「そう。なんの」 B:「え?」 A:「あ?」 B:「なにが?」 A:「なにがなに?」 B:「いや、だから俺が身代わりになるって なんの身代わり?」 A:「だから、この銅像の」 B:「…意味がわかんねーよ」 A:「だから。お前が明日一日、この銅像の 身代わりしとくじゃん?その間に俺が アリバイとか作ったりとか 色々やっとくから」 B:「え、似てるってそーゆー理由で?」 A:「それ以外になんかあんの?」 B:「なんかあんのってお前…」 A:「良いから早く塗ってこいよ 全身。緑に」 B:「これ一本で?」 A:「足りない?」 B:「足りる訳ねーだろ 大体何これ中身ほとんどねーじゃねーか 残ってるのもカチコチだし」 A:「俺が小学校の時のだからな」 B:「小学校?」 A:「結構、田舎の方ににあってさ 周り山とか森ばっかなんだよ」 B:「知らねーよ」 A:「だから減りが早いんだよな。緑の」 B:「だから知らねーよ」 A:「買って来りゃいいのか。今。緑を」 B:「そーゆー話してんじゃねーだろうが」 A:「まぁ、確かに今の時間じゃコンビニ行っても 量足りるほど買えねーか」 B:「いや、塗らねーよ? 量が足りたとしても塗らねーよ?」 A:「なんで」 B:「なんでって、お前…。大体、身代わりって 一日中このポーズしてなきゃならないってことだろ?」 A:「当たり前じゃん」 B:「こんな四股踏んだみてぇな それで両手あげて」 A:「格好いい」 B:「無理だろ 一日中なんて持つはずねーだろ。他にもメシとか小便とか 汗で絵の具も流れるだろーし」 A:「そこはお前。頑張れよ」 B:「頑張れねーよ」 A:「あ、それに、それ油絵の具だから汗じゃ流れない」 B:「だから塗らねーし」 A:「あ、油絵の具ってコンビニじゃ売ってねーか」 B:「絵の具から頭離せ」 A:「どうしたいんだ。お前は」 B:「どうって…お前これ一人で運べんの」 A:「背負う」 B:「一人で?」 A:「だから、そこは頑張るよ。俺も だからお前も頑張れよ」 B:「いや無理だろう」 A:「なんなんだお前は やる前から無理とか。いっつもそう お前は昔っからいっつも。この際だから言っとくけどな 始めから無理とか言ってたら、欲しい物なんて、何にも手に入んねーからな」 B:「なんで俺怒られてんの」 A:「友達として注意してやってんだろうが お前の悪いとこを」 B:「てゆーかさ、これ二人で運べばよくね」 A:「それじゃ、お前がツライ役割ばっかりだからさ」 B:「だから、やらねーよ。身代わりは」 A:「じゃあ、どーすんだよ アリバイ作りとか」 B:「え」 A:「ちゃんと考えてんのかよ」 B:「…わかんねーけど」 A:「ほら。何も考えねーで言ってんじゃねーよ ちゃんと考えてから言え」 B:「…ごめん」 A:「馬鹿が」 B:「なんか不安になってきた お前、これちゃんと売れるんだよな」 A:「当たり前だろ」 B:「ごめん。ちょっとそこだけ聞かして どうやって売るのかだけ聞かして」 A:「おじいちゃん居るじゃん。俺の」 B:「珍宝の」 A:「アンティークショップな アンティークショップ珍宝。珍しい宝」 B:「骨董屋だろ」 A:「アンティークショップ」 B:「珍宝って」 A:「馬鹿にしてんのか、お前」 B:「だってお前、珍宝だぜ?」 A:「馬鹿にしてんのか、お前 俺のおじいちゃんが一生懸命考えた名前、馬鹿にしてんのか」 B:「怒んなよ」 A:「謝れ」 B:「ごめん」 A:「俺に謝ったって仕様がねぇだろ ちゃんと、おじいちゃんに謝れ」 B:「解ったよ。明日謝るよ」 A:「明日はお前、おじいちゃんのとこ行けねぇだろうが」 B:「身代わりはやらないの」 A:「あと明日おじいちゃんいねーから」 B:「なんで」 A:「なんでも鑑定団にでんだよ」 B:「テレビの?」 A:「そう」 B:「すげぇ」 A:「アレの、ほら、お宝を売るコーナー」 B:「ああ、なんだっけあれ」 A:「あのコーナーにでんの」 B:「ちょっと待って」 A:「なに」 B:「そのコーナーにだすの?」 A:「出すんじゃなくて、出んの なんだお前。人のおじいちゃんをモノみてぇに」 B:「違う。この銅像を、そのコーナーにだすの」 A:「そう」 B:「それで買い手を見つける」 A:「だから、そう」 B:「無理、無理、無理」 A:「だからお前は、また。やる前から無理とか」 B:「やんなくてもわかるよ 買い手から連絡来る前に、警察から連絡くるよ」 A:「…あれ」 B:「今、気付いたの」 A:「じゃあ、売れねーじゃん」 B:「他にプランなし?」 A:「どうすんだよ」 B:「こっちの台詞だよ 俺は、お前が全部考えてあるって言うから…」 A:「ちょっと待て。誰かきた」 SE:近付いてくる足音 B:「警備員?」 A:「だろうな」 B:「どうすんだよ」 A:「大丈夫だって ちゃんと考えてあっから」 C:「先輩?」 A:「お疲れ」 C:「どうしたんすか。こんな時間に」 A:「ちょっと、忘れ物」 C:「誰すか?」 A:「ああ。友達」 C:「どうも」 B:「どうも」 A:「これ作ったの、こいつ」 B:「え」 C:「この銅像ですか?」 A:「そう」 C:「マジで」 A:「似てるだろ」 C:「ウケる。似てる」 A:「自分の作品が見たいっていうから」 C:「ああ、それで」 A:「連れてきた」 C:「メキシコの人」 A:「え」 B:「え」 C:「書いてありますよ。ここに 作者、ロドリゴ・アンドレ メキシコ」 A:「そうそう」 C:「見えないっすねぇ」 A:「日系だから」 B:「アミーゴ」 C:「アミーゴ」 A:「つーか、日本在住」 B:「こんばんは」 C:「こんばんは」 B:「早く言えよ、お前 アミーゴとか言っちゃったよ 恥ずかしい」 A:「来たの最近だから、日本語ちょっとアレだけど」 B:「ヨロッシクオニガシャス」 C:「おにが…?」 B:「オニガシャス」 C:「ウケる」 B:「ウケル…」 C:「あ、先輩」 A:「なに」 C:「なんか、今日、セキュリティ動いてないっぽいんですけど」 A:「ヤバイじゃん」 C:「ヤバイっすよね」 A:「仕様がねぇなぁ。見てきてやるよ」 C:「オニガシャス」 B:「ウケル」 SE:遠ざかっていく足音 C:「サボテンって美味いんすか?」 B:「え」 C:「サボテン。美味いんすか?」 B:「タベタコトナイ」 C:「え。メキシコ人なのに?」 B:「ハイ」 C:「メキシコ人なのに、サボテン食わない人なんているんすか」 B:「イルヨ」 C:「えー。なんか超裏切られたわ」 B:「ゴメン」 C:「サボテンのステーキとかさ 食ったことないの」 B:「タベタコトナイ」 C:「あっそ。でも、あれってどうやって料理すんの。焼くだけ?」 B:「ワカラナイ」 C:「針抜くのとか やっぱ専用の道具とかあるわけ」 B:「ワカラナイ」 C:「何もわかんねーんじゃん 使えねぇなぁ」 B:「ワカラナイ」 C:「テキーラは」 B:「テキーラ」 C:「あれも、原料サボテンだろ?」 B:「ワカラナイ」 C:「うーわ、もう、マジ使えねぇ」 B:「ニホンゴ、チョト、ムズカシイ」 C:「あ、俺が何言ってるかわかんなかったんだ」 B:「ワカラナイ」 C:「馬鹿って意味わかる?」 B:「ワカラナイ」 C:「バーカ」 B:「…」 C:「あ、先輩」 A:「お前、あれ、制御のパソコンおかしいぞ」 C:「マジすか。ヤベェ」 A:「またエロサイトでも見てたんだろ」 C:「見てないっすよ」 A:「ウィルス入ったんじゃねーか」 C:「見てないっすよ…」 A:「とりあえず、サポートに電話してこいよ」 C:「先輩してくださいよ」 A:「俺、勤務時間外だもん」 C:「えー」 A:「早くしてこいよ」 C:「わかりましたよ…」 B:「お前、メキシコ人って」 A:「アミーゴ」 B:「つい、言っちゃったけど」 A:「良かったじゃん、逆に 何か聞かれても日本語知らねぇフリしときゃいいし」 B:「それでエライ目にあったよ」 A:「え、どんな」 B:「いや、いいや。それで大丈夫なの」 A:「なにが」 B:「セキュリティ」 A:「ウィルスなんて入ってねーよ 俺が止めといたんだし」 B:「知ってるよ。俺が心配してんのは そーゆーことじゃねーよ」 A:「じゃあ、なに」 B:「サポートに電話するって」 A:「うん」 B:「誰か来るんじゃねーの」 A:「だから、早くしないと」 B:「まだ持って行く気なの。これを」 A:「何のために来たんだよ」 B:「なぁ、もうあきらめようぜ。お前の後輩にも見られちゃってるしさぁ」 A:「まだ、バレたわけじゃねーよ」 B:「時間の問題だよ。今、これが無くなったら、どう見ても俺らの仕業だよ」 A:「じゃぁ、他に方法があんのかよ」 B:「無ぇよ。失敗したんだよ、俺たちは あきらめるしかねぇよ」 A:「お前はいいのかよ。それで」 B:「仕様がねぇよ」 A:「…ダメだ」 B:「なんで」 A:「こいつを持って帰らなきゃ…」 B:「なんだよ」 A:「おじいちゃんが、なんでも鑑定団に出られねぇ」 B:「それこそ諦めろよ」 A:「諦められるか」 B:「なんか、別の骨董品だせばいいだろ そっちには」 A:「店のはショボイのばっかりだ」 B:「そりゃ、知ってるよ」 A:「馬鹿にしてんのか」 B:「お前が言ったんだろ」 A:「これを出すって、写真も送っちゃったし」 B:「そんなに出てーのかよ」 A:「なんでも鑑定団だぞ」 B:「なんでも鑑定団だぞ?」 A:「は?」 B:「え?」 A:「なに?」 B:「なにがなに?」 C:「どうしたんすか?」 A/B:「うわ」 A:「なんでもねぇ」 C:「サポート電話してきました 一時間くらいで来るって」 A:「ああ、そう」 C:「なんでも鑑定団だぞ」 B:「え」 C:「教えてたんすか」 A:「え」 C:「日本語」 A:「ああ」 C:「なんでも鑑定団だぞ」 B:「ナンデモカンテイダンダゾ」 C:「ウケる」 B:「ウケル」 C:「なんで、なんでも鑑定団?」 A:「今度、ウチのおじいちゃんが出んだよ」 C:「マジすか。スゲェ」 A:「だろ」 C:「スタジオすか?」 A:「そうだよ」 C:「スゲー」 A:「ほら、あのお宝を売るコーナー」 C:「私のお宝売ります?」 A:「そう。そのコーナー」 C:「アンティークショップですもんね」 A:「まぁ、出すのこれだけど」 C:「え」 A:「この銅像」 C:「あ、これすか」 B:「ちょ」 A:「だから、持って行きたいんだけど」 B:「え」 C:「これを」 A:「一応、作者の許可はもらってるし」 B:「オイ」 C:「じゃあ、いいんじゃないすかね」 B:「えー」 C:「あ先輩、俺、鑑定士のサイン欲しい」 A:「ああ、頼んでやるよ。誰の?」 B:「マテマテマテ」 C:「うわ、誰のにしよう。超迷う」 A:「全員分貰えねーかもしれねーから 絞らねーと」 C:「超迷う」 B:「チョットマテヨ」 C:「うるせーぞ、ロドリゴ」 A:「だまれ、ロドリゴ」 B:「ロドリゴ…」 C:「今、大事な話してんだろーが」 A:「さっきから、横でゴチャゴチャゴチャゴチャ」 C:「日本語もろくに解らねーくせに」 A:「話の腰折るんじゃねーよ」 B:「イヤ…」 C:「なんだ?一人だけ会話に混ざれなくて寂しくなったか?」 A:「誰も、テメーと話してねーんだよ」 C:「外人のテメーに、なんでも鑑定団の凄さ解んのか」 A:「解んねーよな。テメーには」 C:「だったら黙っとけ」 A:「喋んな。馬鹿」 C:「馬鹿」 A:「死ね」 B:「いい加減にしろ」 C:「え」 A:「おい」 B:「さっきから黙って聞いてりゃ。俺を何だと思ってんだ」 A:「おい、ロドリゴ」 C:「日本語ベラベラじゃねーか、ロドリゴ」 B:「ロドリゴなんて呼ぶんじゃねーよ、俺を」 A:「お前…」 C:「ちょっと、先輩どーゆーこと?」 B:「泥棒だよ俺たちは。俺とそいつで組んで、泥棒に来たんだよ」 C:「泥棒?」 B:「盗みに来たんだ。この銅像を」 C:「え。自分の物を?」 B:「俺のじゃねーよ」 C:「だって、ロドリゴだろ?お前」 B:「日本人」 C:「でも、お前が作ったんだろ?」 B:「作ってねーよ」 C:「じゃあ、何でこんなに似てんだ」 B:「知るか」 A:「おい、もうやめろ」 B:「うるせーよ。大体、お前の所為じゃねーか。こうなったのは ちゃんと考えてあるとか言って。お前が考えたのなんて 俺が全身緑に塗って、これの身代わりになるとか 盗んだ物をなんでも鑑定団で売るとか 滅茶苦茶なもんばっかりじゃねーか」 C:「ウケる」 B:「笑い事じゃねーよ」 A:「お前も乗ったじゃねーか」 B:「乗った俺が馬鹿だったよ」 C:「え、じゃあ、なんでも鑑定団は?」 B:「でねーよ」 A:「でるよ」 C:「やっぱり出ますよね」 B:「お前、もう、マジ諦めろよ 俺だって諦めたんだから」 A:「俺とおじいちゃんの夢だぞ」 C:「あきらめちゃダメだ。それは」 B:「お前、関係ねーだろ」 C:「先輩とおじいちゃんの夢かなえましょう」 B:「煽んな」 C:「なんだったら、これ持ってっちゃってください」 B:「協力すんな」 C:「サインがかかってんだ。こっちは」 B:「それが本音か」 C:「悪いかよ」 B:「たかが、サインだろう」 C:「たかがとか、テメェふざけんな」 A:「鑑定士のサイン舐めてんのか」 B:「なんで、そんな必死なんだ。お前ら」 A:「なんでも鑑定団だぞ」 C:「なんでも鑑定団だぞ」 B:「なんでも鑑定団だぞ?」 A:「は?」 C:「あ?」 B:「え?」 A:「なに?」 B:「なに?」 C:「なにがなに?」 B:「あー、もう面倒臭え。じゃあ俺が身代わりになってやるよ」 C:「は?」 A:「なに言ってんだお前」 B:「だから、どうしてもこの銅像じゃなきゃダメなんだろ? だったら俺が、全身緑に塗りたくって、それで鑑定されてやるよ」 A:「買い手が見付かったらどうすんだよ」 B:「んなもん、先に売れたとか言っときゃいいだろうが」 C:「ちょっと待て」 B:「なんだよ」 C:「それは、お前もスタジオに行くってことかよ」 B:「そうだろ」 C:「天国かお前」 B:「は?」 C:「お前がスタジオ行って、鑑定士に触られて、鑑定されて。天国かお前」 B:「なに言ってんだお前」 C:「オープン・ザ・プライス」 B:「落ち着け」 C:「そんなおいしい役、お前なんかにやらせられるか」 B:「俺以外にいねーだろーが」 C:「俺がやる」 B:「お前、似てねーじゃねーか」 C:「この際、関係ねーよ、そんな事は 俺の方が、絶対なんでも鑑定団愛してるし お前より上手くできるに決まってるよ なんでも鑑定団への愛がそうさせるよ」 B:「いい加減にしろ」 A:「落ち着けよ。お前をそこまで巻き込めねーよ」 C:「先輩…」 A:「だから、その役は俺がやる」 B:「お前もいい加減にしろ」 【終】 |
B:「うわ」 A:「でけー声出すな、馬鹿」 B:「いや、誰かいるのかと思って」 A:「ただの絵じゃん」 B:「暗かったから」 A:「ビビってんじゃねーよ」 B:「だって、お前、こんな、泥棒みてーな真似」 A:「泥棒だけどな」 B:「ハッキリ言うなよ」 A:「今更」 B:「なんか、緊張してきた 大丈夫だよな」 A:「なにが」 B:「いや、全部お前に任せちゃったけどさ 大丈夫なんだよな」 A:「信用してねーのか」 B:「そーゆーんじゃねーけど」 A:「大丈夫だって」 B:「本当に?」 A:「嫌なら降りれば。まあ、まともに借金返せればだけど」 B:「いや、やるよ」 B:「しかし、気味悪いよなぁ 夜の美術館って」 A:「そうか?」 B:「ほら、絵とか銅像とかさ なんか動き出しそうな感じすんじゃん」 A:「動くわけねーだろ」 B:「でも、ほら ガキの頃、音楽室の肖像画の目が動くとかさ あったじゃん」 A:「だから、動くわけねーだろ」 B:「いや…」 A:「馬鹿か」 B:「…」 A:「ああ、ここだ」 B:「結構でかいな。実物大?」 A:「だな」 B:「運べるか」 A:「大丈夫」 B:「でも、銅で出来てんだろ?」 A:「こーゆーのは大体中が空洞になってんだよ これなら四〇sってとこか」 B:「流石だな」 A:「ちゃんと調べて来てんだよ」 B:「俺、こーゆーのわかんねーから お前に任せたけどさ やっぱこれが高いわけ」 A:「うん。てゆーか似てんじゃん」 B:「何が」 A:「顔が」 B:「誰に」 A:「お前に」 B:「似てる?」 A:「似てる」 B:「そうかな」 A:「じゃあ、これ」 B:「何これ」 A:「何って、絵の具」 B:「いや、そりゃ見りゃわかるけど」 A:「塗って」 B:「どこに」 A:「お前に」 B:「なんで」 A:「だから、身代わりになんだろ お前が」 B:「なんの」 A:「そう。なんの」 B:「え?」 A:「あ?」 B:「なにが?」 A:「なにがなに?」 B:「いや、だから俺が身代わりになるって なんの身代わり?」 A:「だから、この銅像の」 B:「…意味がわかんねーよ」 A:「だから。お前が明日一日、この銅像の 身代わりしとくじゃん?その間に俺が アリバイとか作ったりとか 色々やっとくから」 B:「え、似てるってそーゆー理由で?」 A:「それ以外になんかあんの?」 B:「なんかあんのってお前…」 A:「良いから早く塗ってこいよ 全身。緑に」 B:「これ一本で?」 A:「足りない?」 B:「足りる訳ねーだろ 大体何これ中身ほとんどねーじゃねーか 残ってるのもカチコチだし」 A:「俺が小学校の時のだからな」 B:「小学校?」 A:「結構、田舎の方ににあってさ 周り山とか森ばっかなんだよ」 B:「知らねーよ」 A:「だから減りが早いんだよな。緑の」 B:「だから知らねーよ」 A:「買って来りゃいいのか。今。緑を」 B:「そーゆー話してんじゃねーだろうが」 A:「まぁ、確かに今の時間じゃコンビニ行っても 量足りるほど買えねーか」 B:「いや、塗らねーよ? 量が足りたとしても塗らねーよ?」 A:「なんで」 B:「なんでって、お前…。大体、身代わりって 一日中このポーズしてなきゃならないってことだろ?」 A:「当たり前じゃん」 B:「こんな四股踏んだみてぇな それで両手あげて」 A:「格好いい」 B:「無理だろ 一日中なんて持つはずねーだろ。他にもメシとか小便とか 汗で絵の具も流れるだろーし」 A:「そこはお前。頑張れよ」 B:「頑張れねーよ」 A:「あ、それに、それ油絵の具だから汗じゃ流れない」 B:「だから塗らねーし」 A:「あ、油絵の具ってコンビニじゃ売ってねーか」 B:「絵の具から頭離せ」 A:「どうしたいんだ。お前は」 B:「どうって…お前これ一人で運べんの」 A:「背負う」 B:「一人で?」 A:「だから、そこは頑張るよ。俺も だからお前も頑張れよ」 B:「いや無理だろう」 A:「なんなんだお前は やる前から無理とか。いっつもそう お前は昔っからいっつも。この際だから言っとくけどな 始めから無理とか言ってたら、欲しい物なんて、何にも手に入んねーからな」 B:「なんで俺怒られてんの」 A:「友達として注意してやってんだろうが お前の悪いとこを」 B:「てゆーかさ、これ二人で運べばよくね」 A:「それじゃ、お前がツライ役割ばっかりだからさ」 B:「だから、やらねーよ。身代わりは」 A:「じゃあ、どーすんだよ アリバイ作りとか」 B:「え」 A:「ちゃんと考えてんのかよ」 B:「…わかんねーけど」 A:「ほら。何も考えねーで言ってんじゃねーよ ちゃんと考えてから言え」 B:「…ごめん」 A:「馬鹿が」 B:「なんか不安になってきた お前、これちゃんと売れるんだよな」 A:「当たり前だろ」 B:「ごめん。ちょっとそこだけ聞かして どうやって売るのかだけ聞かして」 A:「おじいちゃん居るじゃん。俺の」 B:「珍宝の」 A:「アンティークショップな アンティークショップ珍宝。珍しい宝」 B:「骨董屋だろ」 A:「アンティークショップ」 B:「珍宝って」 A:「馬鹿にしてんのか、お前」 B:「だってお前、珍宝だぜ?」 A:「馬鹿にしてんのか、お前 俺のおじいちゃんが一生懸命考えた名前、馬鹿にしてんのか」 B:「怒んなよ」 A:「謝れ」 B:「ごめん」 A:「俺に謝ったって仕様がねぇだろ ちゃんと、おじいちゃんに謝れ」 B:「解ったよ。明日謝るよ」 A:「明日はお前、おじいちゃんのとこ行けねぇだろうが」 B:「身代わりはやらないの」 A:「あと明日おじいちゃんいねーから」 B:「なんで」 A:「なんでも鑑定団にでんだよ」 B:「テレビの?」 A:「そう」 B:「へぇ」 A:「アレの、ほら、お宝を売るコーナー」 B:「ああ、なんだっけあれ」 A:「あのコーナーにでんの」 B:「ちょっと待って」 A:「なに」 B:「そのコーナーにだすの?」 A:「出すんじゃなくて、出んの なんだお前。人のおじいちゃんをモノみてぇに」 B:「違う。この銅像を、そのコーナーにだすの」 A:「そう」 B:「それで買い手を見つける」 A:「だから、そう」 B:「無理、無理、無理」 A:「だからお前は、また。やる前から無理とか」 B:「やんなくてもわかるよ 買い手から連絡来る前に、警察から連絡くるよ」 A:「…あれ」 B:「今、気付いたの」 A:「じゃあ、売れねーじゃん」 B:「他にプランなし?」 A:「どうすんだよ」 B:「こっちの台詞だよ 俺は、お前が全部考えてあるって言うから…」 A:「ちょっと待て。誰かきた」 SE:近付いてくる足音 B:「警備員?」 A:「だろうな」 B:「どうすんだよ」 A:「大丈夫だって ちゃんと考えてあっから」 C:「先輩?」 A:「お疲れ」 C:「どうしたんすか。こんな時間に」 A:「ちょっと、忘れ物」 C:「誰すか?」 A:「ああ。友達」 C:「どうも」 B:「どうも」 A:「これ作ったの、こいつ」 B:「え」 C:「この銅像ですか?」 A:「そう」 C:「マジで」 A:「似てるだろ」 C:「ウケる。似てる」 A:「自分の作品が見たいっていうから」 C:「ああ、それで」 A:「連れてきた」 C:「メキシコの人」 A:「え」 B:「え」 C:「書いてありますよ。ここに 花を摘む少女 作者、ロドリゴ・アンドレ メキシコ」 A:「そうそう」 C:「見えないっすねぇ」 A:「日系だから」 B:「アミーゴ」 C:「アミーゴ」 A:「つーか、日本在住」 B:「こんばんは」 C:「こんばんは」 B:「早く言えよ、お前 アミーゴとか言っちゃったよ 恥ずかしい」 A:「来たの最近だから、日本語ちょっとアレだけど」 B:「ヨロッシクオニガシャス」 C:「おにが…?」 B:「オニガシャス」 C:「ウケる」 B:「ウケル…」 C:「あ、先輩」 A:「なに」 C:「なんか、今日、セキュリティ動いてないっぽいんですけど」 A:「ヤバイじゃん」 C:「ヤバイっすよね」 A:「仕様がねぇなぁ。見てきてやるよ」 C:「オニガシャス」 B:「ウケル」 SE:遠ざかっていく足音 C:「サボテンって美味いんすか?」 B:「え」 C:「サボテン。美味いんすか?」 B:「タベタコトナイ」 C:「え。メキシコ人なのに?」 B:「ハイ」 C:「メキシコ人なのに、サボテン食わない人なんているんすか」 B:「イルヨ」 C:「えー。なんか超裏切られたわ」 B:「ゴメン」 C:「サボテンのステーキとかさ 食ったことないの」 B:「タベタコトナイ」 C:「あっそ。でも、あれってどうやって料理すんの。焼くだけ?」 B:「ワカラナイ」 C:「針抜くのとか やっぱ専用の道具とかあるわけ」 B:「ワカラナイ」 C:「何もわかんねーんじゃん 使えねぇなぁ」 B:「ワカラナイ」 C:「テキーラは」 B:「テキーラ」 C:「あれも、原料サボテンだろ?」 B:「ワカラナイ」 C:「うーわ、もう、マジ使えねぇ」 B:「ニホンゴ、チョト、ムズカシイ」 C:「あ、俺が何言ってるかわかんなかったんだ」 B:「ワカラナイ」 C:「馬鹿って意味わかる?」 B:「ワカラナイ」 C:「バーカ」 B:「…」 C:「あ、先輩」 A:「お前、あれ、制御のパソコンおかしいぞ」 C:「マジすか。ヤベェ」 A:「またエロサイトでも見てたんだろ」 C:「見てないっすよ」 A:「ウィルス入ったんじゃねーか」 C:「見てないっすよ…」 A:「とりあえず、サポートに電話してこいよ」 C:「先輩してくださいよ」 A:「俺、勤務時間外だもん」 C:「えー」 A:「早くしてこいよ」 C:「わかりましたよ…」 B:「お前、メキシコ人って」 A:「アミーゴ」 B:「つい、言っちゃったけど」 A:「良かったじゃん、逆に 何か聞かれても日本語知らねぇフリしときゃいいし」 B:「それでエライ目にあったよ」 A:「え、どんな」 B:「いや、いいや。それで大丈夫なの」 A:「なにが」 B:「セキュリティ」 A:「ウィルスなんて入ってねーよ 俺が止めといたんだし」 B:「知ってるよ。俺が心配してんのは そーゆーことじゃねーよ」 A:「じゃあ、なに」 B:「サポートに電話するって」 A:「うん」 B:「誰か来るんじゃねーの」 A:「だから、早くしないと」 B:「まだ持って行く気なの。これを」 A:「何のために来たんだよ」 B:「なぁ、もうあきらめようぜ。お前の後輩にも見られちゃってるしさぁ」 A:「まだ、バレたわけじゃねーよ」 B:「時間の問題だよ。今、これが無くなったら、どう見ても俺らの仕業だよ」 A:「じゃぁ、他に方法があんのかよ」 B:「無ぇよ。失敗したんだよ、俺たちは あきらめるしかねぇよ」 A:「お前はいいのかよ。それで」 B:「仕様がねぇよ」 A:「…ダメだ」 B:「なんで」 A:「こいつを持って帰らなきゃ…」 B:「なんだよ」 A:「おじいちゃんが、なんでも鑑定団に出られねぇ」 B:「それこそ諦めろよ」 A:「諦められるか」 B:「なんか、別の骨董品だせばいいだろ そっちには」 A:「店のはショボイのばっかりだ」 B:「そりゃ、知ってるよ」 A:「馬鹿にしてんのか」 B:「お前が言ったんだろ」 A:「これを出すって、写真も送っちゃったし」 B:「そんなに出てーのかよ」 A:「なんでも鑑定団だぞ」 B:「なんでも鑑定団だぞ?」 A:「は?」 B:「え?」 A:「なに?」 B:「なにがなに?」 C:「どうしたんすか?」 A/B:「うわ」 A:「なんでもねぇ」 C:「サポート、電話してきました 一時間くらいで来るって」 A:「ああ、そう」 C:「なんでも鑑定団だぞ」 B:「え」 C:「教えてたんすか」 A:「え」 C:「日本語」 A:「ああ」 C:「なんでも鑑定団だぞ」 B:「ナンデモカンテイダンダゾ」 C:「ウケる」 B:「ウケル」 C:「なんで、なんでも鑑定団?」 A:「今度、ウチのおじいちゃんが出んだよ」 C:「マジすか。スゲェ」 A:「だろ」 C:「スタジオすか?」 A:「そうだよ」 C:「スゲー」 A:「ほら、あのお宝を売るコーナー」 C:「私のお宝売ります?」 A:「そう。そのコーナー」 C:「アンティークショップですもんね」 A:「まぁ、出すのこれだけど」 C:「え」 A:「この銅像」 C:「あ、これすか」 B:「ちょ」 A:「だから、持って行きたいんだけど」 B:「え」 C:「これを」 A:「一応、作者の許可はもらってるし」 B:「オイ」 C:「じゃあ、いいんじゃないすかね」 B:「えー」 C:「あ先輩、俺、鑑定士のサイン欲しい」 A:「ああ、頼んでやるよ。誰の?」 B:「マテマテマテ」 C:「うわ、誰のにしよう。超迷う」 A:「全員分貰えねーかもしれねーから 絞らねーと」 C:「超迷う」 B:「チョットマテヨ」 C:「うるせーぞ、ロドリゴ」 A:「だまれ、ロドリゴ」 B:「ロドリゴ…」 C:「今、大事な話してんだろーが」 A:「さっきから、横でゴチャゴチャゴチャゴチャ」 C:「日本語もろくに解らねーくせに」 A:「話の腰折るんじゃねーよ」 B:「イヤ…」 C:「なんだ?一人だけ会話に混ざれなくて寂しくなったか?」 A:「誰も、テメーと話してねーんだよ」 C:「外人のテメーに、なんでも鑑定団の凄さ解んのか」 A:「解んねーよな。テメーには」 C:「だったら黙っとけ」 A:「喋んな。馬鹿」 C:「馬鹿」 A:「死ね」 B:「いい加減にしろ」 C:「え」 A:「おい」 B:「さっきから黙って聞いてりゃ。俺を何だと思ってんだ」 A:「おい、ロドリゴ」 C:「日本語ベラベラじゃねーか、ロドリゴ」 B:「ロドリゴなんて呼ぶんじゃねーよ俺を」 A:「お前…」 C:「ちょっと、先輩どーゆーこと?」 B:「泥棒だよ俺たちは。俺とそいつで組んで、泥棒に来たんだよ」 C:「泥棒?」 B:「盗みに来たんだ。この銅像を」 C:「え。自分の物を?」 B:「俺のじゃねーよ」 C:「だって、ロドリゴだろ?お前」 B:「日本人」 C:「でも、お前が作ったんだろ?」 B:「作ってねーよ」 C:「じゃあ、何でこんなに似てんだ」 B:「いや似てね…似てるな」 C:「似てるだろ」 B:「そっくりだ」 C:「何でこんなに似てんだ」 B:「知るか」 A:「おい、もうやめろ」 B:「うるせーよ。大体、お前の所為じゃねーか。こうなったのは ちゃんと考えてあるとか言って。お前が考えたのなんて 俺が全身緑に塗って、これの身代わりになるとか 盗んだ物をなんでも鑑定団で売るとか 滅茶苦茶なもんばっかりじゃねーか」 C:「ウケる」 B:「笑い事じゃねーよ」 A:「お前も乗ったじゃねーか」 B:「乗った俺が馬鹿だったよ」 C:「え、じゃあ、なんでも鑑定団は?」 B:「でねーよ」 A:「でるよ」 C:「やっぱり出ますよね」 B:「お前、もう、マジ諦めろよ 俺だって諦めたんだから」 A:「俺とおじいちゃんの夢だぞ」 C:「あきらめちゃダメだ。それは」 B:「お前、関係ねーだろ」 C:「先輩とおじいちゃんの夢かなえましょう」 B:「煽んな」 C:「なんだったら、これ持ってっちゃってください」 B:「協力すんな」 C:「サインがかかってんだ。こっちは」 B:「それが本音か」 C:「悪いかよ」 B:「たかが、サインだろう」 C:「たかがとか、テメェふざけんな」 A:「鑑定士のサイン舐めてんのか」 B:「なんで、そんな必死なんだ。お前ら」 A:「なんでも鑑定団だぞ」 C:「なんでも鑑定団だぞ」 B:「なんでも鑑定団だぞ?」 A:「は?」 C:「あ?」 B:「え?」 A:「なに?」 B:「なに?」 C:「なにがなに?」 B:「あー、もう面倒臭え。じゃあ俺が身代わりになってやるよ」 C:「は?」 A:「なに言ってんだお前」 B:「だから、どうしてもこの銅像じゃなきゃダメなんだろ? だったら俺が、全身緑に塗りたくって、それで鑑定されてやるよ」 A:「買い手が見付かったらどうすんだよ」 B:「んなもん、先に売れたとか言っときゃいいだろうが」 C:「ちょっと待て」 B:「なんだよ」 C:「それは、お前もスタジオに行くってことかよ」 B:「そうだろ」 C:「天国かお前」 B:「は?」 C:「お前がスタジオ行って、鑑定士に触られて、鑑定されて。天国かお前」 B:「なに言ってんだお前」 C:「オープン・ザ・プライス」 B:「落ち着け」 C:「そんなおいしい役、お前なんかにやらせられるか」 B:「俺以外にいねーだろーが」 C:「俺がやる」 B:「お前、似てねーじゃねーか」 C:「この際、関係ねーよ、そんな事は 俺の方が、絶対なんでも鑑定団愛してるし お前より上手くできるに決まってるよ なんでも鑑定団への愛がそうさせるよ」 B:「いい加減にしろ」 A:「落ち着けよ。お前をそこまで巻き込めねーよ」 C:「先輩…」 A:「だから、その役は俺がやる」 B:「お前もいい加減にしろ」 【終】 |